・日程 2024年12月28日〜31日 4日間
・山域 剱岳・早月尾根
・メンバー Y(L)、U 2名
今年度の年末年始の日の並びは滅多にない、最大で9連休である。
そんなこともあり、前々からぼんやりと厳冬期の剱岳に登頂できるチャンスではないかと考えていた。
自分が厳冬期の剱岳に入ったのも、かれこれ6年前の話しだ。
その時は登頂できず、いつかはリベンジしたいと思い続け、購入する装備品などはどこか剱岳で使うことを意識していた気がする。
11月の後半、日程的に行くことのできるメンバーを募り、剱岳に入ることを決断。
なぜなら富山県の条例で20日前には登山届を提出しないといけないからだ。
それだけ厳しい山域だということを思い知らされる。
前回もそうだったが、新幹線で富山に入ることにし早めに新幹線のチケットは予約をした。
剱岳は天候次第なので、直前の天気予報を考慮して日程の変更も視野に入れておく。
12月の後半、新幹線のキャンセル料が発生する前にメンバーで日程の最終的な話し合いをし、後半になるにつれて気象条件がより厳しくなると判断。
行けるメンバーが減ってしまうが、新幹線の予約をキャンセルし、日程を前倒しすることにした。
年末なので再度チケットを取ることはできず、車で移動することに。
しかしその時、Nさんからその日程だと参加できなくなってしまったとの連絡が入る。
2名で剱岳に入るか、当初の日程で4名で他の山域に変更するか、迷いに迷ったが、Uさんが行くことに前向きな回答だったので、無理せず行けるところまで行ってみようという判断をした。
この時点で26日、ここからは時間も無いので軽量化を考えた共同装備の見直しを2人で綿密にしていく。
こういうときほど、重要な装備品を忘れがちなので、不備が無いかを入念にチェックした。
【1日目】
Uさんをピックし、埼玉を5:00に出発。
遠回りだが関越道経由で移動しSAで朝食、高速の雪道で3、4台の単独事故車に遭遇したので、気を引き締めて運転を続ける。
昼頃に富山に着いて食事処で昼食を済ませ、気温が高く雨だったのでそのまま伊折に向かう。
伊折に着くとすでに車が7、8台は駐車してあったので、自分たちもそこに駐車することにし、剱岳へ向かう準備を始める。
軽量化に特化したが、共同装備を2人で分担してもお互いのザックはパンパン。
地味に遠い距離と地味な登りが続く林道を馬場島荘に向けて歩き出す。
雪は積もっているが、雪上車が通った後なので比較的歩きやすく、早めに歩いて3時間ほどで馬場島に到着。
山荘に入る前に隣の山岳警備隊の方々に暖かく迎えられ、日程とメンバーの変更を確認し合う。
出していただいた温かいお茶が身に染みた。
以前ならここでヤマタンという発信機を渡されていたのだが、現在はそのようなことは無く、ココヘリの所持を確認することとなる。
馬場荘に入り、ご主人に挨拶をして乾燥室に濡れた装備品を置き、そそくさと部屋に飛び込む。
部屋には立派なベッドがあり、テレビまで付いていて2人でテンションが上がる!
埼玉から長時間運転してきた我々にとっては、ありがたい限りである。
食事をいただきに食堂へ行き、温かい鍋と氷見のブリ、ご主人自慢の蕎麦をいただいて英気を養う。
馬場島荘に宿泊しているのは、我々の他に有名ガイドさんの3人パーティーのみ。
そこでお互い明日の予定を話し合い、ラッセルになるだろうから行くなら一緒に行ったほうが良いとアドバイスをいただく。
馬場島荘にはお風呂もあるので、冷えた身体を温めて寝る準備は万端。
明日からの登山に向けて、高揚と不安が入り混じる中、お互い眠りにつく。
【2日目】
ガイドさんたちの出発に合わせ3:00に起床。
自分たちの用意した物で朝食をサクッと済ませ、用意してあったお湯をありがたくいただく。
想像以上に入っているパーティーが少なかったので、ここでも極力荷物をデポし、行動力を上げるための軽量化を実施。
それでも重いザックを背負いながら、4:00をちょっと過ぎたころにワカンを付けてスタート。
1000mくらいまでは順調に進み、1日で早月小屋まで行けるんじゃない!?と思っていたが、そんなに甘くはなかった…
前日にそこまで高度を上げていた2人パーティーのトレースのおかげであり、2人に追いついたところからフルラッセルの祭りが始まる。
そんな中でも剱岳を知り尽くしたガイドさんのラッセルの早さが尋常じゃない!
荷物を背負っていると、セカンドでも追いつけないくらいだ。
我々もセカンドで入るときはザックを降ろし、空荷で足場を踏み固めていく作戦に変更。
7人でじわじわと高度を上げていったが、天候は雪が降り続け、風も強くなってきた。
10:30頃、高度は1500mくらいだっただろうか、ガイドさんの3人パーティーはここで撤退するとのこと。
ここまで一緒にラッセルできたことに感謝をしつつ、このまま進むのかの判断を迷う。
Uさんにとっては初めての剱岳、長時間のラッセル、ウェアの濡れ具合も気になるところ。
1600mくらいまで行けば良いテント場はありそうだが、ここは高度を少し下げてでも幕営地を探したほうが良いと決断する。
1350m辺りまで高度を下げ、時間は早かったが適地で整地し始めてゆっくりテン泊準備を始める。
そうしているうちに、馬場島荘の外でテン泊していた4人パーティーが上がってきた。
そのパーティーも我々のテントのすぐ横に幕営するようだ。
人が近くにいるだけで、安心感を感じてしまう。
明日は8人でラッセルかと思いつつ、ヘッデン無しでゆっくり出発しようと2人で話し合って眠りにつく。
【3日目】
30日、この日だけ天候的に頂上にアタックできるチャンスだと思っていたが、このラッセルでは早月小屋まで行くのが精一杯だと判断。
なのでロープやガチャ類などの登攀道具などはテントにデポしていき、アタックザックで行動することにした。
5:00に起床し、だらだらと準備を始め、テントが飛ばされないように入念にチェックをしておく。
隣の4人パーティーが出発した後、我々も7:30くらいに出発。
タイムリミットを15:00と決めて行動を開始する。
ザックがめっちゃ軽い!昨日降りてきたトレースもありサクサク進む。
1600m辺りに来るとテントが張ってあり、先行のパーティーはここまで高度を上げたようだ。
テントが置いてあるということは、我々と同じく目標は小屋までなのかなと察した。
1700m辺りで先行パーティーに追いつき、8人でラッセルすることに。
順調に高度は上げてはいたが、2000m辺りで4人組は撤退。
どうやら12:30にタイムリミットを決めていたようだ。
4人で小屋まで残り200m、リミットは2時間ほど。
ギリギリ行けるんじゃないかと思い、2人パーティーと協力して雪庇に気をつけながらラッセルをしていく。
なんとか小屋が見渡せる2224mのピークに4人で立ち、どんよりとした曇り空の中でお互いの健闘を称え合う。
時間は14:40 タイムリミット内に到着できて一安心。
下りはめちゃめちゃ早く、テント場までの標高差900mを飛ばしまくって1:30で下山。
途中で大阪から来た6人組のパーティーとすれ違い、今夜は小屋まで行って泊まるとのこと。
天候次第でアタックチャンスがあるのかと思うと、うーん…ちょっと羨ましい(笑)
明るい内にテントに戻ってくることができてホッと一息。
より良い眠りにつくために少し整地し直し、食事を食べて今日は就寝。
【4日目】
今日は予定通り、長い道のりの下山のみ。
ビチャビチャになったテントなどを丁寧にパッキングしていく。
昨日軽かった分、重たいザックが肩に突き刺さる。
荷物が重いので、急な斜面はゆっくり慎重に下山。
無事に馬場島荘に着き、山岳警備隊に下山の報告をする。
お世話になった馬場島荘の方々にも挨拶しにいくと、大晦日なのでつきたてのお餅を振る舞ってくださったのが最高にうまい!
長い林道歩きの前にありがたいエネルギーチャージだ。
打ち立ての蕎麦の誘惑に引かれつつ、デポした物を回収して林道歩きを開始。
ここまで来ると、頭の中は温泉と富山で食べる寿司のことで頭がいっぱいだ。
それでもやっぱり長かった林道歩きを終え、大して雪も積もってない車を確認して安心した。
雨でビショビショになったあらゆる物を車に詰め込み、こんなところからはさっさと抜け出そうと伊折を脱出!
大晦日なので営業しているか心配だったが、Uさんのリサーチ能力で日帰り温泉、きときと寿司にありつけて大満足。
帰りも車だが上りなので渋滞もなく、無事に帰宅しお互いの健闘を称え合う。
【総括】
今回は2人パーティーになってしまい、行けるところまでと決めていたが、早月小屋まで行けたのでお互いかなり頑張ったと思う。
もちろん、他のパーティーの協力なくしてはここまで行くことはできなかったのは言うまでも無い。
予想外だったのは、現在は山岳警備隊が早月小屋に入っていないこと。
14パーティーの届出予定があったらしいが、辞退するチームが非常に多かったこと。
そんな中でも一つ一つの判断が良い方向に導いてくれたと思う。
前回よりも明らかに自分の中では成長したんだなと実感した。
辛かっただろうがUさんにも厳冬期の剱岳を経験させることができて本当によかった。
次回の剱岳の挑戦は何年後になるのか、もっと精進しようと思った2024年だった。