メンバー:N山、I澤(L)
日程:2024年8月17日(土)-19日(月)
1日目:9:00上高地バスターミナル-11:30横尾-14:30涸沢
2日目:4:30涸沢-6:00北穂高岳東稜取付-8:50北穂高岳-10:30涸沢岳-11:50奥穂高岳-13:45涸沢
3日目:4:40涸沢-7:10横尾-10:20上高地バスターミナル
今年は盆休みが取れたので、フルで山行に使おうと意気込んでいた。昨年秋に入会させて頂き、それまでハイキング程度の経験しかなかった私が持ち合わせているのは時間だけだ。
N山さんにご一緒して頂けることにもなった。N山さんのご指導の下、盆休み前半の夏合宿後、3泊4日で北アルプスの読売新道か、南アルプス縦走の計画を立てた。…がお盆が近付けば近付く程、天気予報が優れない。おまけに台風が矢継ぎ早に発生する始末だ。うぅ…ついてない…
3泊4日の山行は厳しそうだということで、またまたN山さんに代替案をご指導頂いた。天気予報が比較的前向きで、2泊3日で行ける北穂高岳東稜-奥穂高岳縦走に決まったのは山行の4日前。いつも本当にありがとうございます。緊急連絡先をお引受け頂いたY下さん、ありがとうございました。
出発日の未明まで台風の影響が残る予報で、直前まで気が抜けなかった。
【1日目】晴れ→曇り時々小雨
9:00上高地バスターミナル-11:30横尾-14:30涸沢
N山さんの運転で沢渡へ。バスターミナル前の駐車場は既に満車で一つ上の駐車場へ。未明まで台風の影響が残っていたが、人々には関係なかったようだ。観光客に混ざってバスに乗り込む。
上高地バスターミナルに到着。相変わらずの賑わいだ。7月1日に六百沢で発生した土石流の被害で小梨平~明神の左岸歩道は通行止めになっており、岳沢湿原側の右岸を迂回した。新村橋の架け替え工事も行われている為、その先も迂回する。(完成は令和9年3月とのこと)
N山さんのペースに遅れまいとついていき、2時間半で横尾に到着。とばしましたよ~。
本谷橋で休憩して出発する頃から小雨がぱらついてきたが、カッパを着るほどではなかったので良かった。
順調に歩みを進め、涸沢に到着。ヒュッテのテラスではビール片手に笑顔の人々。テントは40張り程か。
初めて涸沢に来たが、写真で見る以上に壮大で感動。カールとそれを囲うようにそびえ立つ稜線。
テント設営をササっと済ませ、ヒュッテのテラスでビールを乾杯。締めはおでんでした。
明日登る北穂高岳東稜を眺め、本日は終了。
【2日目】晴れまたは曇り
4:30涸沢-6:00北穂高岳東稜取付-8:50北穂高岳-10:30涸沢岳-11:50奥穂高岳-13:45涸沢
自分がリーダーとしてロープを使ってバリエーションルートを登るのは、これが初(もちろんN山さんの強力なバックアップ付です)。ロープワークや支点構築の実力が問われます。
今まで先輩方に貴重な時間を割いて頂き、訓練山行やジムでご指導頂いたお陰でこの日を迎えることができました。本当にありがとうございます。
3時に起床し4時半出発。既に、南稜にはヘッデンの明かりがいくつか。涸沢小屋の脇を通って、まずは東稜取付に向かう。南稜取付ルートを辿り、途中から右に大きくトラバースする。踏み跡以外は岩が不安定で容易に落石する。"踏み跡"といってもガレた岩の斜面にそれを見出すのは容易ではなかった。N山さんはすぐに踏み跡を見つけていたので、やはり経験不足。
ガレザレした斜面を登ると取付(上図の青点)に到着。取付から岩登りをして東稜に上がる(ザイルは出さなかった)。今回は3ピッチ+懸垂下降1ピッチでザイルを使用。1,2ピッチはⅠ澤、3ピッチ目はN山さんがリードした。登攀中はロープワークと支点構築、セカンドの引き上げと大忙し。まだまだ手際が悪く、時間がかかった。
1ピッチ目取付で先行していた3人パーティーに追いついた。ハイマツに支点を作って登り始める。ピナクルにスリングを掛けて支点を作るが、時間がかかる。どのピナクルが良いか、ロープの流れは悪くならないか、スリングが足りなくなるかも、不安だから掛け直そう、、、
セカンド引き上げのシステムを作るのにも時間がかかる。どこをビレイポイントにするか、どこを支点にしたら引き上げ易いか、、、
もたもたしているうちに先行する3人パーティーに引き離され、後続パーティーにも追いつかれた。焦る、がどうすることもできない。結局、3ピッチ目はN山さんにリードを代わって頂き、スピードアップ。
N山さんとリードを入れ替わる時にも、確保機でN山さん(セカンド)を引き上げていた為、確保機の掛け替えが必要で時間がかかる。N山さんから、ムンターヒッチで引き上げた方がリードとセカンドの入れ替えが円滑とアドバイス。ムンターであればそのまま入れ替われます。沢登り会山行で勉強していたはずですが、岩登りでは引き上げは確保機でやるものだという思い込みがありました。
ビレイポイント(安全地帯)の選択にも、判断ミスがあった。先行パーティーの真似をして同じ場所をビレイポイントにしたのですが、登ってきたN山さんから「ビレイポイントはもう少し先の方が良かった。先行パーティーの真似をするのではなく、自分で考えなくてはいけない。」とご指摘頂きました。ビレイポイントの少し先に危険地帯があり、そこもザイルを使うべきだった。状況判断ができていませんでした。
大岩を懸垂下降したが、その際にも2ミス。
①大岩のテッペンに残置スリングが3本程掛けてあり、そのスリング3本に残置ビナが1枚だけ掛けてある支点があった。私は残置ビナ1枚だけにザイルを通して懸垂下降した。が、その残置ビナが破断したらと考えると恐ろしい。もう一枚カラビナを掛けて2枚で懸垂下降した方が良かったかもしれない(この場合、捨てビナになる)。あるいは、残置スリング3本にザイルを通して、懸垂下降した方が良かったかもしれない。N山さんからご指摘頂きました。
②確保機にザイルを通した後、懸垂下降を開始するために、テッペンの岩を回り込んで空中に身を乗り出そうとした際、バランスを崩してしまった。上記の残置スリングにセルフビレイを取っていたから墜落しなかったが、危ない所だった。注意力不足。
北穂高小屋を経由し、北穂高岳登頂。穂高の稜線から滝谷を見下ろす。"鳥も通わぬ"とは言い得て妙。切れ落ちた荒々しい岩壁と尖った稜線がひだのように連なる。「第2・4尾根へは松濤岩のコルからC沢左俣を下降して…C沢は落石が頻発するから気を付けて…」「クラック尾根は何度も登ったな…」「ドームはあそこで、ツルムはあそこで…」とN山さんの解説付き。贅沢です。いつか挑戦できるように、この記録を書きながら滝谷のガイド本とその時の記憶を照らし合わせています。
涸沢岳への登りは所々に鎖やボルトがあってスリリングでした。スッパリ切れ落ちていて、仮にボルトがなければザイルを出さなければ通過できないように思えるセクションもありました。
穂高岳山荘を経由して奥穂高岳へ。ザイテングラートを経由して下山。
涸沢小屋に到着する頃には頭の中はビール…。小屋で飲むか、ヒュッテで飲むか。我慢は良くない!小屋でジョッキを頼んでゴクゴク。「こりゃ水ですね!」と乾いた体はアルコールそっちのけで水分だけを取り込む。ということで、涸沢小屋では水分補給だけして?、アルコール補給は改めてテン場ですることに(笑)
隣の2人組は滝谷ドームに行ってきたとのこと。静かな夜が訪れます。
【3日目】晴れ時々曇り
4:40涸沢-7:10横尾-10:20上高地バスターミナル
午後から天気が崩れる予報だったので、早朝に涸沢を出発。N山さんに屏風岩などについて教えて頂きながら下山しました。
帰りは沢渡バスターミナルからすぐの「しもまさ」さんで汗を流して、梓川SAで冷やし葉わさび蕎麦を頂いて帰路につきました。
行きも帰りも終始、N山さんに運転して頂きました。いつもすみません…。テントのお掃除もありがとうございます!
【山行を終えて】
台風の影響で山行日数の短縮を余儀なくされましたが、結果的には、3,000m峰を3座も登頂することができましたし、バリエーションルートのリードをさせて頂き、現状の立ち位置と今後の課題をご指導頂くことができました。ご一緒させて頂いたN山さん、浦渓会員の皆様のご指導のお陰です。本当にありがとうございます。
今回の計画段階を振り返ると、やはり自分の知っている山の少なさから、代替案の立案にとても苦労しました(ほとんどN山さんに計画して頂きました)。将来的にリーダーとして会山行の計画を担えるようになるためには、知っている山を増やす必要があります。
北穂高岳東稜をザイルを使い2ピッチリードさせて頂きましたが、ロープワーク、支点構築、状況判断のどれをとっても未熟。レベルアップするには、経験=山行日数を増やすしかない。
リーダーが担うべきことは、天候判断、代替案の立案、山域の決定、パーティーの安全確保、山行の確実な遂行、撤退判断など多岐にわたりますが、それらを全うする必要がある。
特にバリエーションルートでは、「たぶん大丈夫だろう」という甘い考えを捨て、気を張り詰めて、万が一を想定した正しい選択が必要。普段の生活、仕事からそういう意識でないと、山で正しい選択をすることはできない。東稜でビレイポイントを間違えたのも、経験だけの問題ではなかったはず。