メンバー:I村さん(L)、H島さん、I澤
日程:2025年8月15日(金)-16日(土)
1日目:9:50上高地バスターミナル-14:30涸沢小屋
2日目:2:50涸沢小屋-4:30五・六のコル-10:40前穂高岳-14:50上高地バスターミナル
前穂高岳北尾根。言わずと知れたクラシックルート。1924年に慶応大学山岳部が初登攀してから100年以上も登り継がれている。梓川沿いからも、如何にもアルパインチックな前穂東壁と共に望むことできる。涸沢に行ったことがあれば誰しもが認識する重厚な尾根。
今回の山行では、3人の都合の合う1泊2日という限られた日程であった為、I村リーダーの提案で小屋泊を選択しました。お盆期間中の小屋予約できるかが核心でしたが、お忙しい中、H島さんが予約してくださいました。本当にありがとうございました!
お盆前半の大雨の影響で山行2日前?までは釜トンネルー上高地間は通行止めとなっていましたが、山行当日は天候も味方し、無事、山行計画を実行することができました。
【1日目】晴れたり曇ったり
1日目は涸沢小屋までということでゆとりある工程。沢渡駐車場の足湯があるエリアに駐車し、シャトルバスの乗継が悪かったのでタクシーで上高地へ(定額制税込6,000円也)。
上高地に到着すると、もはや見慣れた光景となった大混雑、人人人。毎度、河童橋が無事か心配になる(笑)
小梨平には大勢のキャンパー。観光、キャンプ、登山、クライミング。様々な山の楽しみ方を許されているのは上高地の魅力です。
順調に歩みを進め横尾を経由し、涸沢到着。
横尾から前穂東壁と北尾根
涸沢小屋に行く前にヒュッテで生ビール。これは欠かせないですよね!
それから、取付までのルートを偵察。キャンプ地から五・六のコルは支尾根に隠れており見えませんが、地形図を見ながら「あそこじゃないか?」「いやあっちじゃないか?」と議論するのは、明確な登山道のないバリエーションルートの楽しみの一つ。この冒険感は何物にも代えがたい。
五・六のコルへのルートを偵察する二人。後ろ姿がカッコイイ!
涸沢小屋に到着して、I村さんがちらと言っていたパフェを注文。北アルプスの山小屋でパッ・フェッ!
きっと、涸沢小屋には私と同じくらい(いやそれ以上)の甘党がいらっしゃるのでしょう。最高です!
テラスからの眺めも最高です。
夕飯も美味しい。なんと白飯、味噌汁はお替り自由です。
そして個人的に念願だった涸沢小屋に宿泊させて頂きました。涸沢小屋さん、予約して頂いたH島さん、ありがとうございました!
【2日目】
先行パーティがいたら三峰の登りで待ち時間あるかもしれないということで、計画を早めて2時起床、2:50出発。気温は寒くなく、むしろ生ぬるいくらいでした。夜、通り雨があった為か、カール内には霧が立ち込めていました。
1日目の偵察ではキャンプ地から五・六のコルへのルートを探りましたが、当日はヒュッテを通って、北尾根斜面の裾をトラバースしアプローチ。
トラバースを終えると、五・六のコルへ詰め上がります。ガレザレした斜面です。ほぼ同時出発した2人組パーティーがすぐ近くにいましたので、落石させないよう慎重に歩きました。少し登ると雪渓があります。事前の情報収集で雪渓を通らなくてもコルへ辿り着けることが分かっていたので、今回はアイゼン等は持参しませんでした。
I村さんが終始先頭を歩いて下さった。右端に雪渓が見えている。
1時間半程でコルに到着。風が冷たくもう一枚着込む。3~5畳程?の踊り場があり、そこでハーネス等登攀具一式を装着。そうこうしてしているうちに、空が明るみ出しました。
五・六のコルで支度した。
五峰の登りは、歩きと簡単な岩登り。岩はしっかりしています。ただし、落ちれば谷底までです。下りも岩は安定しており、怖い所はなかったです。
五峰
五峰を登っている途中でご来光。信じられない程美しい景色!モルゲンロートを見ることができた。
ブロッケン現象も見ることができた!
4峰の登りはルート取りが核心。私達は最初、涸沢側を登っていきましたが、ある程度登ると岩は不安定になり行き詰りました。ハーケンと捨て縄があったりと、先人達が何とか登ろうとした証がそこにはありました。そこでビレイをして仲間を引き上げている姿が思い浮かびました。
涸沢側は悪いということで、極めて慎重にクライムダウンし、途中で奥又白側の斜面に移る。
こちらは比較的安定していて、登られていることが分かりました。稜上近くに到達。2~3m程のスラブ状の大岩を登れば先に進めるが、もっと安全なルートはないか探りました。少しするとガイドさんを含む3人パーティが登ってきて、そのスラブ状大岩を登っていたので、私達もそれに倣いました。
足がかりはしっかりありましたが、アプローチシューズだったので緊張しました。ロープは出しませんでした。
その大岩を登らなくても、ほんの少し戻って稜通しに歩くこともできたかもしれません。
確か四峰登りの写真
四峰の登り
その後は順調に進み三・四のコルに到着。前日夜に涸沢小屋に作って頂いた弁当を食べて、しばらく休憩+先行パーティ待ち。
三峰
さて出発しようかと支度していると、赤茶色のかわいいオコジョがお出まし。弁当の匂いに釣られたのでしょうか。I村さんに懐いて、去っていったと思ったら戻ってきて、せわしなく、また同じルートで一周回って戻ってきてといった形で。流石はアイドル!サービス精神に欠きませんでした。
三・四のコルでクライミングシューズに履き替え、少し歩いて大きなピナクルにスリングを掛けビレイポイント(BP)を作りました。
1P目はH島さんです。残置ハーケン等に中間支点を取り登っていきます。出だしは少し左上した後、大岩を起点に直上するので、ロープが擦れてかなり重かったようです。
三峰1P目。H島さんのリード。
H島さんのリード
後半部分に2つの大岩に挟まれたチムニー状?があり、殆ど手がかり足がかりのないツルンとした岩です。左岩には丁度足を置ける位置にハーケン1つ、右岩にはハーケンに捨て縄が掛けてあり右手で掴めそうです。廣川健太郎氏の『アルパインクライミングルートガイド』によると、1P目は左右2ルートあり、左はⅢ級、右はⅣ級またはⅢ級+A0となっており、H島さんが選んだのは右ルートだったようです。(山行当日、手元にあったトポにはⅡ級とあったので、H島さんがリードすることになったのですが、どうやら違ったようです。)
フォローの私は思わず左岩のハーケンに足を置いてしまいましたが、H島さんは背中と足で突っ張ってエイドせず登ったそうです。流石すぎる!🙌
途中でロープが動かなくなったので、下でI村さんと「苦戦しているのかな」とお話していたのですが、そういうことだったんですね~笑
2番手で登った私は飄々とビレイしているH島さんと合流すると、A0ルートをリードした驚きと、登り切った勇敢さに、なんだか可笑しくなってしまって、しばらく笑いが止まりませんでした。リードして頂いてありがとうございました!
I村さんは難なくスルスルと登られて、2P目はI澤がリードです。
BPから右にトラバースした後、立派な幅広のガリーに入ります。ガリーを進むと左側に大岩があります。トポにはフェイスを登るとありましたが、右端のクラックの方が面白そうだったのでそちらを登りました。残置ハーケンもありましたが、折角カムを持ってきたのでキャメロット0.75番を使用。練習です。
そこから少し登ったところで岩にスリングを掛けてBPとしました。短いピッチでⅡ級(一部Ⅲ−級)くらいに感じました。
三峰2P目出だしのガリー
3P目はほとんど歩きといった感じで抜けていきます。
3P目終了後は3峰頂上、2峰頂上へはロープを出しませんでしたが、何カ所か墜落の許されない絶妙なトラバースや乗越がありました。4峰程ではありませんでしたが、ルーファイ力も求められます。
2峰の頂上からは5m程懸垂下降します。頑丈な岩に残置捨て縄・ビナがあるので利用させて頂きました。
二峰頂上からの懸垂下降
安定した岩を登り、無事登頂!
事故なくに登り切れた安堵感、そして喜びを噛みしめました。
下山は重太郎新道で上高地へ。先日の仙塩尾根縦走で再発していた腸脛靭帯炎が心配でしたが、I村さんに頂いたテーピング、H島さんに貸して頂いたトレイルランナー御用達の鎮痛クリームを使わせて頂き、心配していた程痛みは出ずでした。気を使って頂き、大感謝です🙇
しかし、重太郎新道は本当に急ですよね。登山道を切り開かれた先人達には驚嘆するばかりです。I村さんも「これは膝痛くなるわ」とこぼしていました。
岳沢小屋で一休み。各々、マウンテンデューとCCレモンで一服してから、とても歩きやすい登山道を歩いて上高地に帰還。シャトルバスで沢渡へ。
【持参した装備】
✓ダブルロープ1組
今回は3人だったのでダブルロープ1組(2本)持参しましたが、2人パーティであれば50mロープ1本でも問題ないと思いました。ガイド本にもそう書いてあります。ルートは大岩などを起点に大きく屈曲しており、ロープ2本使ったとしても、いずれにしても流れは悪くなってしまいます。
✓キャメロット0.5~2番
事前にI村さんから「カムはなくても登れるよ」と言われていましたが、持って行きたくて私が持って行ってしまいました。結局、3峰2P目に無理やり1回使っただけです。
基本的には危険個所には残置ハーケン等があり、I村さんの仰る通りカムはなくても十分登れます。残雪期など残置支点が見つかり辛いことが想定される場合は、持参することを検討しても良いかもしれません。
ちなみに、登攀中、残置カムを2~3個見つけました笑
✓クライミングシューズ
私のクライミング力だと3峰の登りはクライミングシューズを持参して正解だったと思います。心理的に安心して登ることができました。残雪期にクライミングシューズを持参しない場合は、なるべく安全で容易なルートを選ぶルーファイ力が試されるように思います。4峰のスラブ状大岩は登らずに、少し戻って稜通しを通過する。3峰のエイドルートは避けて、左ルートを使うなど。雪質、雪の付き方によって、柔軟に対応する必要があります。
【アフター】
I村さんの提案で白骨温泉公共野天風呂へ。谷に向かって階段を下りていくと、川沿いに露天風呂があります。切り立った赤黒い崖に囲まれて、すぐ近くには川が流れている。まさに秘湯といった感じ。I村さんはどこへ行っても良い所を知っていて、そういった山以外の楽しみを忘れないことは大切だなと、尊敬です。
入浴後、お腹が空きましたねということで、これまたI村さんのご提案で『レストラン 十字路』さんへ。レトロと現代風が喧嘩することなく共存する良い雰囲気の外観と店内。ボリュームたっぷりで大満足です。というか最後はフードファイターの様な気持ちになります(笑)
上高地帰りの定番になりそうです!
十字路風オムライス。鉄皿は触ると普通に火傷するのでご注意ください!
【まとめ】
今回の山行を大船に乗ったつもりで安心して楽しむことができたのは、I村さんのお陰です。
山行計画の核心、涸沢小屋の予約など縁の下の力持ちとしてサポートして下さったのはH島さんです。
そして、入会以来、それとなく目標にしていたクラシックルート・前穂高岳北尾根に挑戦し、完登できたのは、先輩方のご指導のお陰です。
皆様、緊急連絡先をお引受け頂いたF寺さん、ありがとうございました!
引き続き、自分が理想とする山登りを追い求めて、“より高く・より困難”を目標に、感謝の気持ちを持って、楽しみながら精進していきます。